普通の英和辞典を引いたのでは意味不明のこの言葉を、数年前からしばしば見聞きするようになった。
日本語訳として相応しい言葉をさがせば「精査」(くわしく調べること)になるのだろうが、幻世紀の日本では「デュー・デリジエンス」という言葉自体がビジネス用語として立派に独り歩きし、「デューデリ」という略語すら通用し始めている。
本書のテーマである不良債権ビジネスにおいては、不動産のデユー・デリジェンスが必要不可欠なものとなっていて、それを業とする会社がいくつもある。
ゼネコンのデュー・デリジエンス部門が土壌や耐震性など、ハード面の科学的調査を行なうのに対し、不良債権ビジネスで調査対象となるのはむしろソフト面で、その不動産の市場における現実的な価値を割り出す仕事が中心になる。
厳密にいえば、当該不動産を物理的・法律的・経済的に精査し、キャッシュフロー分析などの手法を用いて、将来的な投資リターンを算出するのである。
従来からある不動産鑑定とはまったく別の調査・評価だとお考えいただきたい。
「不良債権ビジネス研究会」で講師役を務めてくれたのは、まさにこの不動産デュー・デリジエンスをビジネスとして行なっている業界人である(以下、「デューデリ氏」と仮称)。
不良債権ビジネスの実態に関する情報提供は、ほとんど彼に負っている。
さらにデューデリ氏は財務諸表分析や税務・会計にも造詣が深く、りそな実質固有化に際してクローズアップされた「税効果会計」と不良債権問題との関係についても、実に懇切丁寧な解説をしてくれた。
本来ならば、そのデューデリ氏を著者に立てるべきところであるが、いかんせん彼は業界の提「守秘義務」にしっかり縛られている。
具体的名称を出して自分たちが関わったビジネスの内容を明かすと、彼の所属する会社への受注が途絶え、業界から爪弾きに遭うことになりかねない。
「それほどのリスクを負ってまで、業界の内幕を話すことはできません。
だけど、世間では不良債権ビジネスについていろいろ誤解があって、その辺をなんとかしたいんです。
別に後ろ暗いことは何もない、純然たるビジネスの一つなんです。
日本経済の再生に向けて一役買っているという自負心もあります。
基本的なビジネスの構図からレクチャーしますし、事倒的なものも守秘義務に反しない範囲で話します。
あとは差しさわりのないよう、うまくまとめてほしい」デューデリ氏の言うH誤解Hとは、たとえば、「外資が、不良債権に絡む不動産を安く買い叩いている」といったようなもの。
実際には、不動産の所有権は外資に移動していないのに、マスコミ等の基本的論調はそうなりがちなのだ。
日本の銀行、金融機関が不良債権を売りに出す場合、買い手が外資になるとは限らない。
現状では日本の企業で買い手として名乗りを挙げるところが少なく、外資が多いという事実はあるわけだが、取引形態が入札、相対いずれになるにしろ、価格決定にあたっては市場の原理がはたらき、買い叩けるようなものではない。
あくまでもビジネスの対象は不良n債権uであって、不動産そのものが売買されるとは限らないのである。
また仮に、外資が不良債権ビジネスで大きな利を得ることがあったにしても、それは大きなリスクを負っている以上、当然ともいうべきハイリスク・ハイリターンの関係であり、競争環境のなかでは利を得ることもあれば損を出すこともある。
デューデリ氏のレクチャーは、業界とはまったく縁のない者にとっても非常に興味深く、安直な言い方をすればH目から鱗ο的インパクトがあった。
本書はそのレクチャーの記録をベースに、ビジネスマンはじめ一般読者の参考にもなるよう、大幅な加工・修正を加えたものである。
マスコミ報道等により、「バルクセiル」(不良債権をひとまとめにして売る)という言葉を見聞きされている方も多いと思う。
この用語も、本書の中心的キーワードとなるものである。
また、1999年に法整備ができて以来、日本でも法的市民権を得た「サービサー」、不良債権も運用利益の出せる投資対象の一つとみる「ファンド(クローズドこも、重要なキーワードの一つといえ本書で、不良債権ビジネスの全容がわかるとはいわない。
講師役のデユーデリ氏にも見えない部分、不明な部分があるとのことだが、本書を読めば、いま日本の不良債権がいかに取引され、「再生」に向かって流動化しているかは、十分におわかりいただけると思う。
本書刊行がなった時点で「不良債権ビジネス研究会」はひとまず解散するが、企業再生ファンドなど「再生ビジネス」が本格化したあかつきには、改めて「再生ビジネス研究会」として結成していきたい。
再生ビジネスといういまもっとも脚光を浴びているビジネス分野は、この不良債権ビジネスの延長線上にあるものにほかならないからだ。
2003年8月プロローグ「不良債権」をネタにビジネスする人々売却損が出てもメリットがある?AVBーS規制さえなければ処分は一段と進む?帳簿上の処理H最終解決ではない。
とりあえす銀行本体から切り離すUFJとみずほ。
売りモノが増え不良債権ビジネスの活況は続く。
ぽしゃったファンドがないことが日本市場の魅力を物語る。
制度創設からわすか4年にして、すでに見切りをつけた外資も取り立てもからむため、法律では暴力団を徹底排除。
誰の目にも見えるようなオープンな市場があるかといえばそうではなくて、きわめて限られたクローズドな世界。
目に見えないものはないに等しい、だから日本に不良債権ビジネスはない。
そんなふうに決めつける人もいるわけです。
しかし、クローズドであるにせよ、現実に「バルクセール」という形の売買取引が随時行なわれていて、売り手と買い手の仲介をする人たちもいれば、買い手側に依頼されてバルクに入っている不動産の調査・評価をするデュー・デリジエンス業など、周辺ビジネスに携わる人もいます。
私たちのやっているデューデリ業の場合、資本は要らないけれど知識や経験がものをいう。
なにより市場における不動産価値の目利き、それらが生み出すであろうキャッシュフローの予測ができないことには話になりません。
だから、誰にでもできるという商売ではないし、訪問して新規クライアントを獲得していくような仕事でもない。
結局、あそこに頼めば間違いないだろうという信用があって、はじめてリピートで依頼がくるし、業界内で人が動くと「会社を移りました。
こっちのほうでもお願いします」という具合にクライアントが増える。
そういう意味からも、クローズドな世界にならざるを得ないのでしょうね。
そもそも、売り手と買い手は「秘密保持契約」を結びますし、われわれも同様に守秘義務を負っています。
外からは見えにくいビジネスであることは確かです。
見えにくいから誤解が生まれ、おかしな憶測もされますが、やっていることは純然たる合法的ビジネス。
私の知るかぎり、マル暴が関わっているようなケースはありません。
不良債権ビジネスというのは1980年代のアメリカで誕生して、日本では叩年代の終盤に始まったばかりです。
だから、銀行・証券・商社・不動産とか、そういう業種で海外事業を経験し、不良債権ビジネスの現場を見たり関わったことのある人たちが、日本でいま、それをやっているケースも多い。
あるいは、勤めていた会社が潰れてしまったけれど、自分たちにはノウハウがある。

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